【つくるをつなぐ】小久慈焼

【つくるをつなぐ】小久慈焼

【つくるをつなぐ】

地域でつくられたものを地域でつかう。
「つくるをつなぐ」はそんな世の中の動きを、
食材のみならず工芸やクラフト分野へも広げていく試みです。
器の作り手と料理人の出会う場づくりに向け、
それぞれの仕事の世界をウェブ上でご紹介していきます。

器職人編 Vol.1

小久慈焼ができるまで
スープカップからひもとく「ものづくり」

>かたち

ろくろに乗った土が手の中で生き物のように動く。
最初に生まれたかたちが円錐形。
「土殺しといい、こうやって粘土の中心を取りながら、
その中心に手で圧力をかけていきます(小久慈焼/下嶽さん)」
てっぺんをぎゅうっと押し込むようにして、全てのかたちが生まれていく。

トンボという道具で、器の高さや直径をはかる。
手仕事ながら、その仕上がりにほとんどブレはない。
「もう何百個とつくってますからねえ(小久慈焼/下嶽さん)」

別につくった粘土板を切り、接着面の角度を考慮しながら器本体につける。
持ちやすさ、重さの感じ方も位置ひとつで変わってくる。

>くふうやわざ

器本体は久慈粘土でつくるが、取っ手はひび割れしないように
粘性の高い他産地の土でつくる。

口辺は心持ち薄く仕上げる。底にはろくろで仕上げた手指の渦巻きがありあり。
物によってはこの渦巻きを削るが、残してもらっている。
焼くとこの渦巻きの上に釉薬の濃淡が現れて、
ひとつとして同じものがない。

>うわぐすり

スープカップの釉薬掛けは2日かかる。
初日はこうして内側に釉薬をかけて乾かす。

小久慈焼でもおなじみの「外/黒い釉薬(小久慈焼は飴釉)・中/白い釉薬」の掛け分けは
中の釉薬が外に流れる「外流し」といい、釉薬掛けは1日で済む。

しかしスープカップは、外側の釉薬が内に流れる「内流し」にしているため、内側の釉薬をしっかり乾かしてからじゃないと外側が掛けられない。
まず、外側を釉薬の中にすっぽり沈めてから引き上げ、持ち替えて口辺に釉薬をかける。そして余分な釉薬がつかないよう注意深く引き上げる。

>できあがり

小久慈焼は大きなガス釜で焼かれる。
素焼きで8〜10時間、本焼きはおおよそ18時間。陶磁器の焼き方には「酸化焼成」と「還元焼成」があるが、
小久慈焼では酸化焼成で焼いている。

「糠白のクリーム色は還元焼成にすると青みがかってしまうから。ちなみに飴釉も、還元焼成だと黒くなる。還元(焼成)は色味が複雑になる気はしますが、これはもう好みなんですね(小久慈焼/下嶽さん)」

 

>つかいかた

容量はたっぷり350ml。具沢山のスープはもちろん、シチュー、リゾット、パスタなど、どんな料理とも好相性。
これさえあれば大丈夫、そんな畢生椀のような存在の器が目標です。
カラーバリエーション/ホワイト(糠白)、ブラウン(飴釉)、掛け分け(外・飴釉/中・糠白)

タラとじゃがいものレモンスープ

材料
タラ 2切れ※塩タラでもOK
たまねぎ 1/2個(くし切り)
じゃがいも 2〜3個(一口大)
レモン 1/2個
ディル 2枚
塩・こしょう 適量
オリーブオイル 少々

作り方
1 レモンは1〜2枚スライスし、残りは果汁をしぼっておく
2 タラに塩(塩タラの場合は不要)、レモン汁、オリーブオイルを絡ませておく
3 鍋にお湯(500cc)を沸かし、タラ、たまねぎ、ディルひと枝を入れて、中火で10分ほど煮る
4 タラを取り出し、じゃがいもを加えて10分ほど煮る(煮すぎない)
5 じゃがいもに火が通ったら、骨をのぞき一口大に切ったタラを戻す
6 器に盛り、小さく切ったレモン、ディルを添える

ポイント:
スープは魚とたまねぎで、具がじゃがいものスープです。タラを煮る時フタをしないと、魚も生臭くならずすっきりとしたスープがとれます。器に散らしたレモンをかじりながら食べると口の中がスッキリ。味が変わって楽しいですよ。(レシピ考案:タチバナチエコ)

>小久慈焼について

 岩手県にも数多くの器の作り手がいますが、いわゆる「窯元」のような所は数えるほどしかありません。県北の久慈市にある小久慈焼は、その数少ない窯元のひとつ。開窯からの歴史は200年をゆうに数え、あの柳宗悦が「北限の民窯」と称したことでも知られています。現在は代表の下嶽智美さんがかたちをつくり、釉薬を掛けるスタッフが仕上げを担当しています。

長い伝統を支えてきたのはこの地でしか採れない久慈粘土。その色白で柔らかな土質は、糠白や飴色という小久慈焼を象徴する色合いを守ってきました。定番の器は片口やすり鉢などで、無駄を削ぎ落としたシンプルなかたちと温かみのある色合いが多くの人に受愛され、県外、特にも首都圏などのギャラリーなどで取り扱いが広がっています。

>つくりてについて

下嶽智美さん

 子供の頃から職人仕事をそばで見つめ、ろくろを自然に覚えたといいます。外商を担当し各地の物産展まわりをした経験から小久慈焼の伝統を見直す必要性に気づき、以来「現代の暮らしにも馴染む器」をテーマにつくってきました。下嶽智さんの作品は従来の小久慈焼に比べ、注ぎ口の形やふちの厚み、高台など全体にすっきりとした印象を漂わせますが、糠白と飴釉という伝統の色は変えていません。素朴さとモダンさをともに備えた器は食事のシーンを問わずに使えます。

Photo,Text by Hiromi Inoue

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