食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。
「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、
長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく
イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。
永遠に食べそこねた「どっ辛」。好きだったら迷わず買え!
しそ巻きみそ
東北地方を中心に作られている「しそ巻きみそ」。本場は宮城や山形のようだけど、研究熱心な農家のお母さんが多い岩手でも産直などでよく見かける。
見た目は青じその葉に包まれたカニカマ風形状で、誰が作っても大きな違いはなさそう。しかし中の味噌は甘かったりしょっぱかったり、中には「!」と飛び上がるほど辛いものもある。
砕いたクルミやゴマが入っているものもあり、これは食感も楽しい。過日行った秋田県では隠し味にかつお節を入れてコクを出していたし、山形県に行ったときには「しそ巻きのタネ」なる調味みそ商品にまで遭遇した。業界的に味噌がミソなんでしょうね、ベタだけど。
しその葉っぱに味噌をくるんで揚げ焼き。
こんな料理を思いついた先人、すごい。
佃煮と並ぶ、甘系ご飯のおともである。
調べてみれば材料もシンプル。好きな味噌に砂糖を加えて、砕いたクルミ、ゴマや唐辛子はお好みで。キモはつなぎに入れる小麦粉(あるいはもち粉)で、これで食べたときのねっとり&もっちり感が生まれるらしい。この味噌を青じそで巻いて揚げ焼きすれば、はい完成。ねっとりと甘辛いみそと、油を吸ってパリパリになった青じそが口の中で渾然一体と化し、白飯に合うことこの上ない。
と書いておきながら、私はつくるより手っ取り早く買う人間である。お気に入りは岩手県の南にある道の駅で、なぜかしそ巻き味噌が惣菜コーナーの2段ぐらいを占めるほど充実していた。お子様向けの甘口から一番辛い「どっ辛」まで、辛味別で4、5段階もあったろうか。おそらく、岩手県内一のバリエーションだったと思う。
こんな風に、3本程度を爪楊枝に刺してある。
考えてみれば、結構手間だよなあ。
しそ巻き味噌について書いているうちにあの味が恋しくなって、つい先日、道の駅に行ってきた。しかし売り場に並んでいたのは、お隣宮城県のメーカー商品。店の人に聞いたところ「家族の介護がはじまってしそ巻き味噌づくりを辞めたんですよ」というではないか。
知らなかったのだ。あのバリエーションを作っていたのが、たった一人のお母さんだったと。
辛いの苦手だからと買わなかった「どっ辛」は、もう永遠に食られない。ああ、ああ、ああ…!!
帰り道、私は誓った。
自分よ、意思ある購買者となれ!
「また今度でいいや」なんて言ってないで、好きなもんは積極的に買って食べようと。
こういうのもエシカル消費というのかしら。ともあれ、しそ巻き味噌よ永遠に。
これは陸前高田の道の駅で遭遇、
まん丸のしそ巻き味噌。
ってもう、巻いてもいないやん…。
illustration by ENGAWA
漫画 sirorin